怪しい薬

それは、中国人も日本人も大好きな梅の花が咲く頃の出来事であった。

その日、太田は不覚にも風邪をひいてしまった。ベットでごろごろしていると、キッチンのほうから何やら怪しい匂いが漂ってきた。
スパイスの匂いではない。なんと表現したらいいのだろう、少なくとも食べ物の匂いとは思えない。

中国滞在中、いろんな人の家に招かれては、日本の中華料理屋ではまず絶対にお目にかかれない本場中国の家庭料理を嫌というほど堪能し、そして今なお本場中国の家庭料理を毎日食い続けている太田でさえ未だかつて体験したことのないこの香り…妻はキッチンでいったい何をしているのだろう?
この不気味な匂いはいったいなんなんだ?

「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け…」とは言わなかったが、鍋を持って奥様が登場!
鍋に入っているということは、少なくとも口にできるものである。
それ以前にキッチンで食べ物以外のものを作るバカもいない。稀に作るバカもいるが…

片言の半分以上意味不明な日本語で「あなた今身体悪い。これ薬飲む。元気」
う~む…あの不気味な匂いは薬だったのか。っていうか、薬って自作するものか?
まぁ日本でも薬らしいものを作ったりはするが、でも日本の自作ドラッグとは明らかに違う。
何が違うかっつうと、未だかつて見たことのない未知の物質で構成されているのだ。
龍眼、クコの実、ナツメ…そこまでは判る。っていうか、この時点ですでに不味そう!
さらに見たことのない葉っぱのようなもの、っていうか明らかに葉っぱ。しかも枯葉のように茶色い!
さらにさらに、樹皮のようなもの、っていうか、おもいっきり木の皮。その他もろもろ…。
これが薬だとゆう根拠はどこにある?っていうか匂いが強烈!

これがもし妻の作ったものでなく、医者に出されたものだったら「こんなもん飲めるかワレ~!」と、ちゃぶ台をひっくり返して暴れるところである。
でも愛する妻が心配して作ってくれたものだから飲まないわけにはいかない。愛情がたっぷり入ってるのだから。

この日を境に、太田は今まで以上に健康には気を使うようになった。もうあの薬はこりごりだからである。

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